月と植物との関係
我々は現代において、太陽暦という時間割で生活を行っています
自然時間というものは本来、ものさしの様に万物に均等に流れているものでは無いのですが
便宜上、自然の周期を参考に、ものさしを当てて社会生活を送る必要があります。
太陽暦は、一年という単位、太陽が1回転(地球が公転)する時間を基準に計算しています。そのため、4年に一日、うるう日を設定するだけで
向こう数百年間ズレが生じないという便利な暦で、
西洋各国がこれを取り入れており、それまで太陰暦を使用していた日本も
これでは貿易がやってられない(という表向きの事情)ということもあって、明治時代より取り入れられています。
しかし、植物にとってはどうでしょう?
月の周期という細かい時間で区切っている太陰暦は
太陽の1回転とのズレを修正するために毎年調整のうるう月を設定しなければなりませんから、面倒ではあります。
面倒ですが、植物には誰も「太陽暦に変わったよ」と伝えてないものですから、まだ太陰暦で動いているようなんですね
魚にもまだ太陽暦を伝えてないので、漁師さんなんかは未だに太陰暦カレンダーを使用している方も多く
使用しない場合はそれを補う魚群探知機などハイテク化で補われています。
ただ、人間以外の動植物にとってはそもそも暦なんて見ていませんから、
奴らは単純に月単位の、月と太陽の引力による地球上水分の変化と、
太陽の動き(季節の動き)で動いているだけなんです。
太陽暦に慣れた私たちはもちろん太陽の動きに合わせて、植物を栽培します。
「日照が弱まり気温が落ち着く9月上旬から播種をして、気温を考えると例年、年内でキャベツが結球するのは10月5日播種までだな」
とか
「遅霜が終わるのが5月2日だから、それ以降に露地夏野菜を植えよう」とか。
もちろん植物にとって、天体から受ける影響は、太陽がほとんどでしょう。
でも一日って、太陽半分、月半分
海の高さが変わる程の水分に対して影響力のある月の動きが
植物体内や土壌水分に対して影響がないはずがない!
年単位の太陽よりも、もっと細かなリズムのある月のことも考えてみると、農業って、もっと奥深くなるはずです。
実際、物理的に必ずしも引力そのものが影響しているワケではないようですが、
結果としてその周期で植物に現れる傾向を、まとめておきます。
月齢の捉え方
当たり前のことではありますが、月の周期は、大凡29.5日で一回転します。
1日に新月であれば
約15日目が満月、所謂”十五夜お月さん”になる訳ですね
そして30日目にかけてまた新月に戻っていきます。
それに伴い、植物に対してどのような管理をすべきか、まとめてある図がありましたので載せておきます
ノウカノタネpodcastで話していて、
結論としては、
新月の時と満月の時が、成長時期である
ということ。
その間の期間が転流期間である
ということ。そして、
新月時は栄養成長に、満月時は生殖成長に傾く
という捉え方が最も分かりやすいのではないかという考えに至りました。
新月ってどういう状態?
皆既日食。この状態は新月の時にしか起こりません。
要は、地球から見て”月の後ろに太陽がある”状態のことが新月です。
普段は月と太陽は公転角度が違いますから、完全に重なる日食以外の時は月は見えません。
稀に三日月の時など、太陽光が地球で反射してうっすらと月が確認できることはありますね。
右図の様に
地球から見て片側、一方方向に月と太陽が並んでいます。
この場合、月の引力と太陽の引力が同じ方向からかかりますから
イメージとしてはぐーーんと植物体や土壌水分が引っ張られていることになります。
この時期、植物は栄養成長に傾きますので、下葉の糖度よりも、上位の頂芽に近い部分の糖度が高くなります。
花や果実の糖度は幾分低くなるようです。
また、植物体内の硝酸体窒素成分の含量があがり、その影響でphが下がる傾向にあります。
では、満月というのはどういう状態?
大体お察しのことかとは思いますが
満月とは新月とは逆に左図の様に、
地球から見て、月と太陽が反対方向にあります。
なので月は太陽光をまともに正面から受け、まん丸お月様として見えます。
勿論図とは違い、公転角度が違うので、月食時以外は地球の影に隠れてるってことにはなりませんよ。
満月のときは、両側に引っ張られているため、栄養成長ではなく、生殖成長となり
頂芽と下葉の糖度差はほとんどなくなり、花や果実の糖度が高くなり、生殖器の活動が活発になります(人間もね)
また、植物体内の硝酸体窒素成分が減退するために、phが上がる傾向があります。
施肥のリズム
では、「新月で栄養成長だから、窒素をやれば効果的なんだね!」
「満月で生殖成長だから、リン酸をやれば効果的なんだね!」という早合点にはご注意です。
月のリズムはあくまで傾向として補助的に考える必要があること、そして
予防的に先手先手の管理をする手助けにする
ということが最も効率的な捉え方であるようです。
吸収させるべき肥料を、その時々で考えて、マニュアル通りではなく、植物と対話しながら施肥設計をしましょう。
原則で言えば、
新月の時
は、栄養成長に傾く、硝酸体窒素含量が増える、phが下がる、等の理由により、病害の発生も懸念されます。
これから収穫ピークを迎えなければならない作物の時期であれば、ここで窒素をガツンと効かせることで
弁当肥えとして沢山成らせても体力が落ちない体をつくることができます。
ペナントレースを戦うために、野球選手がキャンプで体重を増やすような感じですね。
かといって窒素が効きすぎてか弱くなったり、整理落花しちゃうような状況では逆効果
ソフトバンクの松坂みたいに体重だけ増えて働けなくなっては元も子もありません。
ここはリン酸を施肥することが従来望ましいとされているようです。
亜リン酸肥料などの散布で、バランスをとりつつ、病害に備えた防除もしておきましょう。
半月の時は、上弦であろうと下弦であろうと、
植物体内において転流が大きく働きます。
基本的にはカリウム等の流動性の高い成分の施肥に適した時期のようです。
満月の時
は、生殖成長に傾くため、着花が盛んにおこなわれる傾向にあります。
新月の時と同じロジックで、
ここで窒素施肥、苦土施肥等を切らさないことで、成り疲れをさせない栽培ができるようです。
また、満月までの上弦の間は、天候が荒れやすく、新月までの下弦の間は天候が良くなる傾向が高いらしく
それもあってかどうか、満月は虫の産卵時期にあたります。
満月前に害虫防除、産卵は3,4日後になりますので、満月を過ぎてしまった場合は殺卵性の殺虫剤を選択しましょう。
満月の時に雨天の場合、産卵不可でその月の防除は必要ない
なんていう記事もありましたが、どうなんでしょうか?傾向としてはあるのかもしれませんが、
その時は虫の腹の中の卵の行き場が不明ですね。
月をどの程度考慮して農業を営むのかというところは、あくまで個人の責任において判断をお願いします。
ある程度神秘的に、スピリチュアルにでも月を農業から捉えてみると、ひとつ農業の奥深さを感じることができると思います。
今後とも月の動きには『ノウカノタネ』として突っ込んでいきたい分野でもあります。
満月の時の光線はなかなかのものですし、光合成効果が0ということもないでしょう。
栽培ではなく、農業ですから、月が人間に与える精神的、肉体的影響も考えてみても面白いと思います。
↓PODCAST
エラー: コンタクトフォームが見つかりません。
コメントを残す